自己紹介③

私はもうすぐ40歳を迎える音楽家、鍵盤楽器奏者です。

高専を卒業した20歳のころ、東京の音楽専門学校に2年間通うべく上京しました。

平日の朝晩のご飯付きの学生寮、部屋は5〜6畳ぐらいの広さ。

午前中勉強、午後は専門学校、18時から終電近くまで居酒屋でバイト。そんな日々でした。

音楽の専門学校なんだから、卒業する頃にはどうにか何かしらで生活できているのではないか。

入学当初はそんなお花畑な考えでした。

入学したコースは「作曲・アレンジコース」。

もともとシンガーソングライターに漠然となりたいと思い専門学校を目指したわけですが、

そんな食えるかわからないもののために両親が高い学費を捻出してくれるわけがなく、「作曲家、編曲家」という肩書きのほうがまだマシ、と思ってくれたのでここに入りました。

授業を受けてみると、自分がいかに無知だったか思い知らされます。

地元のいち高校のコミュニティの中で少しアコギとピアノの知識がある、というだけの「井の中の蛙」でしかなかったのだと。

好きな音楽は聴いてはいたが、深堀りもせず、表面だけなぞって満足しているだけだったのです。

本来は好きな音楽を深掘りしてルーツをたどり、そのまたルーツをたどったり。

この音は何の楽器だろう?ピアノっぽいけどピアノじゃないな。

このドラムの音色は生ドラムっぽいけど普通じゃない音色だな、とか。

全くしてこなかったですね。

音楽は好きでしたが、まだそこまで好きではなかったのかなと今は思います。

そんなど素人なわたしは、専門学校で知り合った同年代の友達に誘われてジャズファンクっぽいインストバンドをなぜかやることになります。

ほぼJ-POPしか聴いてこなかったわたしがです。

当然よくわからないまま、とりあえず譜面に書いてあるコードをおさえるのに必死でした。

絶対的にインプットの量が足りていません。

「〇〇(わたし)のプレイ、全然バックボーンが見えないけど、一体どんなアーティストが好きなの?」

「リズムが悪すぎる、もっと周りの音聴けよ」

そりゃあそうですよね。

バンドメンバーや学校の先生にすすめられ色んなアーティストを聴くようになります。

Beatles、Stevie Wonder、Michael Jackson、Eric Clapton、Billy Preston、Earth,Wind & Fire、Sly & The Family Stone、

後々好きになるのですが、この時は好きで聴く、というより必要だから聴かなきゃいけない、というほうが強かったです。

専門学校にも学園祭はあり、友達同士でバンドを組んで披露するステージもありました。

こんなわたしでも誘ってくれる友達がいて、女の子ボーカルとギター、ベース、ドラム、キーボード(わたし)の5人バンドで出演しました。

確か「浜崎あゆみ」さんのバラード曲だったかな。

あれは悲惨でした。

譜面は暗記していたんですが、

歌とピアノだけになるセクションで頭が真っ白になり派手にコード進行を間違えたんですよね。

歌の子がピアノに惑わされず本来のメロディーから外れないように必死に歌っていた様子は20年ちかくたっても今でも鮮明に覚えています。

あれは本当に申し訳ないことをしました。

それが悔しかったのか、歌の伴奏を自分なりに研究して鍛えました。

歌いやすい伴奏とはどんなものなのか。

歌を支える名手として紹介されている音源を片っ端から聴いて耳コピしたり、

CDのクレジットを見て、「この人の名前、あのCDにも載ってたな」とその人が参加している情報を調べたり。

なかでも「中西康晴」さんはわたしが興味がわいた音源によく登場する人物でした。

シンプルなバッキングやアルペジオをクリックに合わせて練習したり、基礎的なことを淡々とやっていました。

通っていた専門学校では単純にキーボード人口が少なかったので、学生でバンドを組むとなると「こっちでも弾いてよ〜」とよく声がかかりました。

もしかしてこれは美味しいポジションなのかもしれない。

一歩外を出ればキーボーディストなんてたくさんいるのに、ここでも井の中の蛙の井にゆっくり入っていくことになります。

それでも色んなバンドに参加することで、経験値を積むことができました。

自分の知識と経験が大甘ちゃんだったことに気付かされ、それでも何とか自分なりに研究と練習を重ねた専門学校生活でした。

卒業時期に学校の講師の一人であるキーボーディストのTさんからお声がけいただき、

色んな声優さんが6人ほど集まって開催する2時間くらいのコンサートのバックバンドをツインキーボード体制でやるので、セカンドキーボードとして参加しないか?

とのお誘いでした。

なんとお金の発生するお仕事です。

ここからありがたいことに縁が広がっていくわけですが、

また次回に。


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